「介護は成長産業」
「増え続ける高齢者」
「10兆円を超える市場規模」
介護業界に身を置く人なら、このような言葉を1度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
上記で言われているのは全て正しく、介護業界にはソニー、パナソニック、イオン、ローソン、ソフトバンクなど、日本が世界に誇る企業が続々と参入しています。
しかし、参入者が増えている反面、介護事業者の倒産が多いのも事実。
ある日突然「会社がつぶれてしまった」と明日からの仕事に困らないようにするためにも、これから介護の仕事に就こうと考えている人や、今勤めている介護施設を辞めて他の事業所に転職したいと思っているなら、就職先や転職先は慎重に選ばなければなりません。
ここでは、相次ぐ介護事業者の倒産の実態と、現場で働く介護職員が経営状態の良い介護施設をどのように選べばいいのか?就職先・転職先の探すときのポイントについてご紹介させていただきます。
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過去最高。年間76件もの介護事業者が倒産している
東京商工リサーチという信用調査会社が2016年1月に公表したデータによると、2015年の1年間に倒産した「老人福祉・介護事業」は76件で、過去最多を記録しました。
倒産件数は2014年より4割も増えています。
2015年の特徴は、小規模事業所の倒産が目立っており、デイサービスやショートステイなどの「通所・短期入所介護事業所」の倒産は29件で、2014年の2倍近くに達しています。
また、訪問介護事業所の倒産も、2014年より20%も増えています。
一方、負債10億円以上の大型倒産はゼロ件で、大規模な倒産はなくなりました。
倒産が目立った「通所」「短期入所」「訪問介護」の3つに共通しているのは、利用者の介護度が比較的軽く、比較的資本金が少ない事業規模が小さい企業が運営している点。
倒産した事業所を見ると、半分以上が設立から5年以内の「新しい介護施設」で、新規参入して数年の介護事業者の倒産が目立っているのが大きな特徴です。
大企業も危ない!?ニチイ学館の大幅赤字と業績悪化の理由
「資本金が少なく、事業規模が小さい企業には注意しよう」と述べましたが、では「大手なら大丈夫なのか?」というと、ニチイの大幅赤字への転落を見ると疑問が残ります。
日本の介護会社の中で最も大きい規模を誇る「ニチイ学館」ですが、同社は2016年の決算で160億円という大幅な赤字に転落しています。
ただ、160億円という巨額の赤字ではありますが、ニチイ学館くらいの大企業になると、すぐに倒産することはありません。
ですが、2015年は黒字を維持していただけに、ニチイの赤字は業界に大きな衝撃を与えました。
経済評論家などの分析によると、ニチイ学館が不振に陥ったのは、「訪問介護を中心にした事業を展開しているから」とも言われています。
訪問介護とは、ヘルパーさんが独居高齢者宅などを訪問して、身の回りのお世話をする介護サービスになりますが、一方で、業績を延ばしている介護会社が取り組んでいるのは、有料老人ホームや介護サービス付き高齢者住宅などの「施設運営」になります。
ニチイ学館が力を入れている訪問介護は、ヘルパーが1人で高齢者宅に行かなければならないので、新人教育に多大な時間がかかります。
ですが、老人ホームなどの介護施設であれば、介護未経験者を入社させても、先輩が常に傍いるので、新人教育がスムーズにいき、教育コストが少なくて済みます。
ご存知のように、介護業界は人手不足が深刻なのは周知の事実。
ですので、新人教育の手間もコストもかからない老人ホームのような施設を運営している方が、経営が順調になりやすい傾向にあるのです。
つまり、ニチイ学館が赤字になってしまった理由には、訪問介護事業だからという事が大きく影響している可能性が高いのです。
check→介護業界売上高ランキング
ただ、大手企業の方が平均年収は高い傾向にある
小規模運営も厳しい。。大企業も赤字を出してるし、一体どこに就職すれば1番良いの?となってしまいますが、基本的には大手上場企業の方が平均年収も高く、事業基盤も安定しています。
介護職員の給料は、厚生労働省の統計からも分かるように
- 国内の全産業の平均月給は「約33万円」
- 老人ホームなどの介護員と訪問介護員の平均月給は「約22万円」
- 資格取得までに長い年月が必要になるケアマネージャーでも「約26万円」
と、平均給与は他の業種と比べると、お世辞でも高いとは言えませんが、これはあくまで平均的なお話で、介護職の中でも「給料が高い事業所」と「給料が安い事業所」に分かれます。
それが顕著にあらわれるのが、「大企業と呼ばれる規模の会社に勤める介護職」と「小規模で運営しているところに勤める介護職員」の給料の差。
結論からお伝えさせていただくと、一般的には、事業規模が大きい老人ホームや特養などの方が賃金が高く、規模が小さい介護会社は安いです。
事業規模の大小で賃金に差が出るのは当然な話で、大きな介護会社は多くの利用者を抱えていますが、そうなると、1人の介護職員がケアできる高齢者の人数が多くなり、効率的に業務が行えるようになります。
例えば、レクリエーションの参加者が10人でも15人でも、スタッフ1人の手間はそれほど変わりませんよね。
ですが、10人分の介護報酬よりも、15人分の介護報酬の方が高額nになり、これが介護職員の年収に反映されるわけです。
規模が大きくなれば、その分利用者が増えるのでスタッフの負担は増えますが、介護報酬も高額になるので小さな会社に勤めるより、上場企業や業界大手の企業に就職・転職した方が、事業規模の小さい介護施設よりも、運営規模の大きい大手の方が給与は高い傾向にあるのです。
参考記事:介護サービス上場企業の平均年収一覧
倒産を目の前にしたら、そこで働く介護職員はどうすればいいのか?
さて、もしあなたが今勤めている老人ホームの運営会社が倒産したら、どうしたらいいでしょうか?
明らかに経営状態の良くない施設に勤めている人は、とても不安だと思いますが、答えとしては「倒産することに対してそれほど心配する必要はありません」
というのも、老人ホームや訪問介護、グループホームなどは、都道府県や市町村に届け出を出しているので、介護会社は行政によってしっかり管理されています。
行政のチェックが厳しいのは、介護サービスはその他のビジネスと異なり、命に関わる仕事をしているからです。
ですので、老人ホームの運営会社が倒産する場合でも、行政は必ず入居者が困らないように配慮します。
「配慮」には様々な方法がありますが、例えば倒産した会社の老人ホームを、業績が好調な別の介護会社が引き継ぐのもそのひとつです。
「介護会社の倒産=老人ホームの閉鎖」では、入居者の生活の場が失われてしまうことになり、行政としても大変困ってしまいます。
つまり、運営会社は倒産しても、老人ホームなどの施設は存続することが多いのです。
経営者が代わっても、老人ホームなどの施設が存続すれば、当然そこで働く介護スタッフたちも引き続き働くことができ、給料ももらい続けることができます。
このような理由から「介護員は介護倒産をそれほど心配する必要ない」という訳です。
経営状態の良い介護施設に就職・転職するにはどうすればいいのか?
ただ、「倒産してもそれほど心配はない。。」とは言っても、経営状態の悪い介護施設では働きたくはありません。
できるだけ高時給、高給与で働きたいというのが介護職員の本音ですからね。
経営状態の悪い介護施設を避けて、就職先や転職先を探すには、次の3つに特に注意する必要があります。
- ×資本金が小さい企業(小規模)
- △介護度が軽いサービスを中心に行っている(入所施設以外)
- △新しい企業、新しい施設(新規参入企業)
「安定した介護事業所で働きたい」なら、経営基盤が安定している
〇医療法人
〇社会福祉法人
が運営する施設がおすすめです。
たとえ、給料は民間の介護会社と変わらなかったとしても、医療法人や社会福祉法人の方が経営基盤が安定していますし、民間の介護会社より、医療法人や社会福祉法人の方が、行政に厳しくチェックされているので、行政が簡単には倒産させないシステムになっているのです。
ただ、注意しておきたいのが、「良い介護を行っているかどうか?」に関しては、法人の種類によって決まるわけではありません。
株式会社が運営する介護の方が、医療法人や社会福祉法人の介護方針よりも優れている、自分に合っているというケースは十分あります。
医療法人や社会福祉法人が絶対に倒産しない訳ではありませんが、行政に厳しくチェックされてる背景からも、「安定した介護事業所で働きたい」と考えるのであれば、医療法人や社会福祉法人が運営する施設に勤めるのが最適です。
働きやすい介護施設に就職するためにも、まずは法人の経営状況や提供している介護の質をホームページや介護求人サイトに登録して調べてみると良いんじゃないでしょうか。
check→働きやすい介護施設を探すには?